脱!予定調和のインタビュー
プロダクト開発の評価インタビューでは、仮説をしっかりと検証することが重要です。ただ、その際に一問一答のアンケートのような予定調和のスタイルではなく、対象者の「インサイト」を導き出し、次のアクションにつなげるようなダイナミズムを意識しましょう。では、実際にはどのようにすればよいのでしょうか。本コラムでは、プロダクト開発における評価インタビューのポイントついて解説します。
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インタビューと一口にいっても、ジョブインタビュー、街頭インタビュー、インタビュー調査、ジャーナリズムのインタビューなど様々です。Wikipediaによると、インタビューは大きく分けて、「評価のためのインタビュー」と「情報収集のためのインタビュー」の2つに分かれるようです。
プロダクト開発の現場で行うのは「インタビュー調査」ですが、インタビュー調査においても、評価と情報収集の両方の側面があります。中でも我々のような外部の調査会社に依頼が多いのは、商品・サービスや企業等に対する評価インタビューです。
評価インタビューの場合、事前に評価対象について、どのような意見や評価が出そうか仮説を立てたり、インタビュー後のアクションをどうするか評価基準を決めておきます。「仮説がないインタビューは失敗する」というのがインタビュー調査業界の定説ですが、私たちも日々身をもって実感しています。
その一方で、仮説の検証ばかりに気を取られていると、評価インタビューとは名ばかりの一問一答のアンケートのようになってしまいます。対象者の状況の深堀をすることもなく、仮説に対して新たな道筋を探ることもなく、その時々にうねりのように盛り上がるダイナミズムもないまま、ただ淡々と仮説があっているかを検証するだけでは、有益な評価インタビューとは言えません。なぜならば、評価インタビューに限らず、インタビュー調査においては、対象者の発言の裏にある声にならない声、つまり「インサイト」を導き出すことがとても重要だからです。「インサイト」は、淡々とした評価の会話の中からは読み取りにくいものです。プロダクト開発の評価インタビューにおいては、プロダクトの評価にとどまらず、会話のキャッチボールの中から相手の価値観や信条、行動傾向などを把握することも重要です。
「インサイト」とは、対象者の頭や心の内側に潜むもの、可視化や言語化はできていないけれど、その人にとって重要なこと、何かを動かすきっかけになるようなことを指します。インサイトは、人をつき動かす隠れた心理であり、その人の行動に大きな影響を与える要因と言えるでしょう。インタビュー調査でインサイトを導き出すためには、対象者の価値観やライフスタイル、感情の浮き沈みやモチベーションの要素などを深く探る必要があります。
では、どうすれば対象者のインサイトを導き出すような効果的なインタビュー調査ができるのでしょうか。ポイントは「予定調和」にならないことです。そのためには、次の3点を意識することが重要です。
インタビュー調査に慣れていないと、手元のインタビューフローと格闘してしまい、インタビュー対象者と向き合っていない、ということが起こります。これを防ぐためには、まずインタビュー調査を何のために実施し、最終的に何を持ち帰ればよいのかを明確に意識することです。つまり、次のアクションのためにはここで何がわかればよいのかを、インタビュアーが事前によく考えておくことが重要です。また、次の質問をどうするかばかりに気を取られて、相手の話を上の空で聞いていたということがないよう、事前にシミュレーションを繰り返し、インタビューフローを頭の中に叩き込んでおく必要があります。
インタビュー中は、対象者のことは何でも知りたいという気持ちで、相手の懐に入り込むような姿勢が重要です。その際、「どうしてですか?」「どう思いますか?」と押してばかりいてもだめです。押してダメなら引いてみる。沈黙を苦手とする人は少なくありませんが、沈黙は相手が考えている証でもあります。「質問の意図が伝わっていないのでは?」と不安になって、自分ばかりしゃべっていたとならぬよう、じっくり待つ姿勢も大切にしましょう。また、インタビュー調査の性質上「聞き手」と「話し手」の役割に分かれてしまうことが多いのですが、そうなりすぎないことも重要です。時には自分の意見も少し交えて、友人の隣に座って対話をするような気持ちで質問を投げかけると、自然な会話の中から相手の方のホンネが見えてきます。
そして、インタビュー調査からインサイトを導き出す上で一番重要なのは、決められたフローから逸脱することを恐れないことです。もちろん、評価検証にまったく役立たないことを聞いてしまっては元も子もありません。ただ、事前に決めたフローからやや逸脱してでも、相手の行動の源泉や深層心理を理解しようという姿勢で臨んでください。インタビュー調査では「相手が何と発言したのか」と言質を取ることが重要なわけではありません。対象者の考え方や価値観、行動の傾向や選択の基準などを導き出せていれば、「これの評価はどうですか?」と直接聞かなくとも、おのずとどう思っているかがわかるものです。
また、インタビュー後は、インタビューの内容がまだ頭に残っているうちに、仮説の検証結果とインサイトを振り返り、次のアクションを決定しましょう。そうすることによって、アイデアの精度を高めることができます。
もし、プロダクト開発やインタビューのことで何かお困りのことがありましたら、以下のお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。