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開発段階に応じて、2つのDSRを使いこなす


DSRによるアイデア創発

「デザインスプリントリサーチ(DSR)」には、ゼロベースでサービスの種を生み出すことに注力する「ゼロワン」と、プロダクトとしての経験を踏まえ、ゴールから逆算的に改善、改良する「カイゼン」の2つのアプローチがあります。本コラムでは、2つのDSRの違いについて解説いたします。



目次

私たちが提唱する「デザインスプリントリサーチ(DSR)」は、顧客の「悩み、困りごと、ニーズ」に着目してアイデアを出し、それをプロトタイプとして形にし、想定顧客に提示して検証インタビューをすることで、アイデアをプロダクトに変えていくという開発手法です。


DSRには、1.アイデア創発、2.プロトタイプ制作、3.仮説検証インタビューの3つのステップで構成される体系的なプログラムが用意されており、新たにプロダクトを開発する場合も、既存のプロダクトを改善・改良する場合にも活用することができます。


DSRには、「ゼロワン」と「カイゼン」の2つの異なるアプローチがあります。プロダクトの開発状況によってどちらを選ぶかが決まり、アウトプットのアイデアの具体性も変わります。それぞれ、どのような違いがあるのかを見ていきます。


「DSRゼロワン」は、主にこれからプロダクトを開発する人に向けたアプローチで、3段階の最初ステップである「アイデア創発」に重きを置いています。想定される顧客の「悩み・困りごと・ニーズ」にフォーカスして、プロダクトの原型となるアイデアを出します。

DSRゼロワンでは、事業の制約や縛りをできるだけ取り払って、プロジェクトメンバーが自由な発想で、他にはないようなアイデアを考え出すことに注力します。限られた時間内で、ビジネスの種になりそうなアイデアをできるだけ多く出し、仮説検証を繰り返して芽が出そうなアイデアを選び、次のステップにつなげます。


「DSRカイゼン」は、すでに何らかの商品・サービスなどのプロダクトがあり、それを改善、改良するためのアプローチです。実際には、プロダクトをとりまく様々な問題や課題があるため、その状況を整理し、目指すべきゴールから逆算する形で重点課題を定めます。ゴールや課題が定まった後は、想定される顧客の立場に立って、どんな「悩み・困りごと・ニーズ」があるかを改めて考え、それを顧客視点でとらえると、どのようにプロダクトを改善すべきかを模索します。

DSRカイゼンは、PoCなどすでに何らかの事業性を検討した後に取り組むことが多いので、より現実的で具体性のあるアイデアが求められます。


どちらも、想定顧客(人)の「悩み・困りごと・ニーズ」に着目して、顧客視点でプロダクト開発をする、という点は共通です。違いは、主に出発点にあります。DSRゼロワンは、「顧客がのどから手が出るほどほしいと思うアイデア」、「他にはない商品・サービスとは何か」というプロダクト開発の起点に立って議論します。一方で、DSRカイゼンは、すでに何らか構築したプロダクトがあるので、目指すべきゴールから逆算して考えます。取り組むべき重点課題を明確にし、そこから改めて想定顧客の「悩み・困りごと・ニーズ」の視点でアイデアを考え直すアプローチです。

つまり、ゼロベースでサービスの種を生み出すことに注力する「ゼロワン」と、プロダクトとしての経験を踏まえ、ゴールから逆算的に改善、改良する「カイゼン」とは、異なる視点、異なるアプローチが必要だと私たちは考えています。


DSRゼロワンとDSRカイゼンは、「アイデア創発」の違いだけでなく、3ステップ目の「仮説検証インタビュー」のアプローチも異なります。


DSRゼロワンでは、一度作り上げたアイデア仮説に執着しすぎず、客観的に「プロダクトの種」として捉え、本当に必要とされるものなのかをインタビューからシビアに検証する必要があります。

それと同時に、想定したニーズ仮説にぴったりとあてはまらなくても、アイデアのポテンシャルをつぶさぬように、別の方向性を模索したり、将来につなげるような意見も聞き取らなければなりません。DSR ゼロワンでは、仮説をしっかりと検証すると同時に、次につながるアイデアの方向性も探るような発展的なインタビューが求られます。


DSRカイゼンでは、すでに進めてきた何らかのプロダクトの土台に基づき、より現実的で具体的なカイゼン施策に落とし込むことを重視します。この段階であまりに突飛な方向性が出てきても、それはカイゼンの域を超えてしまうかもしれません。DSRカイゼンでは、プロダクトの機能やベネフィットについて現実的かつ具体的な改善策を模索することが重要です。また、仮説検証をする中で、これまで検討してきた方向性ではどうにも先がないと判断した場合は、プロダクトそのものの進退を迫られることも少なくありません。


このように、DSRには「ゼロワン」と「カイゼン」の2つのアプローチがあります。これをプロダクト開発の「フィットジャーニー」と照らし合わせてみるとどのようになるのでしょうか。次のコラムではフィットジャーニーとDSRの関係性について見ていきます。


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